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夜会で踊りましょ!!

第13章 翼女、一人思う

「ふーん」
 佐藤が、ニヤニヤしながら慎太郎と翼女を交互に見ている。


「なんだよ!」
 その顔が気に入らなかった慎太郎が佐藤の方に近づく。

「別に…」
 佐藤は残っていたコーヒーを一気に飲み干す。

「…だか…」

「おかわり!」
 佐藤は何か言いたそうな慎太郎に、空になったカップを向ける。

「……かしこまりました」
 言葉を飲み込んだ慎太郎はカップを受け取り、コーヒーを入れに行く。


「翼女ちゃん。気になる子できたの?」
 佐藤が小声で聞く。

「え…」
 心の中を覗かれたような感じでドキドキしている翼女。


「…頑張ってね。人を好きになるってことは、自分を好きになる事と同じなんだよ」
 佐藤はニコッと笑う。

「あ…はい」
 小さく返事をする翼女。

「おい。娘に手を出すな!」
 新しく入れてきたコーヒーを片手に睨む慎太郎。


「ほら!≪橘さまの浴衣≫って中学生にとって大事って事を翼女ちゃんいも感じてほしくて!」
 慌てたように取り繕う佐藤。 


「………」
 何も言わずコーヒーを置くと、裏に引っこんでいく慎太郎。


(変な空気……)
「私が、部屋にいくね。佐藤さんごゆっくり」
 翼女は、急いで住居用の扉に向かう。

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