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夜会で踊りましょ!!

第15章 タチバナ様に出かける前

「こんにちは!」
 柾季が遥香の家の玄関で声をあげる。

「はーい」
 中から女性の声が聞こえる。

 身なりを整える柾季。

「あら?柾季くん早ったわね。一人で来たの?」
 出てきたのは、車椅子の女性。

「はい。母は展示場から離れれないので!」
 柾季が笑顔で答える。

「そうなの…じゃ、中に入って待ってる?まだ二人とも準備中なのょ」
 車いすをクルッと回転させ、中にはいって行く女性。

(二人?歩睦もこっちで着るのか?)

「お邪魔しまーす」
 柾季は女性に続いて家に入る。


 この人は遥香の母親、和香(のどか)さん。交通事故の後遺症車椅子を使用している。


「ここに座ってて!麦茶持ってくるから!」
 和香が、柾季をテレビの前のソファに誘導する。

「はーい」
 柾季は荷物をそばにおいて座る。


(歩睦もこっちで着るなら…ちょっと相談しずらいなぁ)
 
 柾季は家からずっと考えていたことがあった。


『今日、翼女ちゃんに自分の気持ちを言う。言おう!』

(はー、どうやってきりだそう…さすがに、ストレートに『告白するから、お膳立てして』って言うのもなぁ)



「はい。麦茶!」
 和香が麦茶を入れた容器とコップをもってやってきた。

「あ、ありがとうございます」
 全てを受け取る柾季。

 柾季は受け取った物をテーブルに置いていく。

「…どうかしたの?」
 唐突に柾季の顔を覗き込む和香。


「え?なに?」
 少し驚く柾季。

「今日。いつもの柾季くんじゃ、ないみたい…」
 首をかしげる和香。


「いつもって、今日僕変ですか?」
 少し舞い上がっていたかな?と反省する柾季。

「うーん、ちょっと背伸びしてる感じ?おばさんもよくわからないけど、
何かをしようと決意した顔?大人になろうとしているのかな?」
 車いすを固定してソファに移動しながら言う和香。

(おばさん…鋭い…さすが、遥香の母……、俺って顔に出やすいのか…)

「そうよね。橘様だもの。みんな大人になっていくわ」
 少し寂しそうな顔をしながら、麦茶に手を伸ばす和香。

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