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「ほう。なかなかいい浴衣だな！知っているかな？浴衣の柄には意味があるんだぞ」
　爽果が翼女の浴衣を遥香から受け取り、ハンガーに掛ける。

「柄に意味があるんですか？」
　翼女が目を輝かして聞く。


「浴衣はね。夏の女性を美しく見せる勝負服。柄にだって気を配らないと、粋じゃないよ」
　爽果が人差し指を立てて、説明を始める。

「牡丹(ボタン)や芍薬は『幸福』 蝶は『長寿』 撫子(ナデシコ)は『笑顔』みた
いな感じで演技のいいものを好むわね。ちなみに燕は『家庭円満』って、 言われているわ」

「『家庭円満』…」
　浴衣を買いに行った時の父親たちを思い出している翼女。

「鳥はしばしば「幸せを運ぶ」ものの象徴とされ、なかでも燕は夫婦仲良く子育
てをする鳥として、良い伴侶を呼ぶといわれてるの」

「翼女ちゃんと同じ名前の鳥って浴衣の柄になってもかわいいね♪」
　遥香が笑顔で言う。

「ありがとう」
　翼女も笑顔で答える。


「さて、私はちょっと準備があるから、先に浴衣の下着を着てもらおうか」
　爽果が大きな鏡や椅子を設置し始める。


「はーい」
　遥香と翼女は部屋の角に折りたたみパーテンションを立てる。