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夜会で踊りましょ!!

第16章 浴衣を着るまで…

「お父さん」

「…なんだ?電話終わったのか?…」

「うん」

 翼女が店に入ってきた。


「今ね。遥香ちゃんに電話したら。髪も着付けも、家でやるんだって!」

「家で!?」
 驚いて身を乗り出す佐藤。

「あ、はい。『一緒にしないか』って誘われました。だから、美容室の予約は無くていいです。佐藤さんが私の事を考えてくれた事だけはちゃんと受け取ります」
 翼女が営業スマイルを佐藤に向ける。

「はは。だけか…参ったな…僕だけ舞い上がってたのかな?」
 すとんと椅子に座ると、あからさまに、テンションが下がっていく佐藤。

「あ、佐藤さん。ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃないんですよ」
 翼女が一生懸命フォローしようとする。

「別に…いいけど…」
 いじけた感じでテーブルの隅をつついている佐藤。

「いじけないでください」

「いじけてないもん!」

「もんって…」
 翼女がテンパリそうになる。



「翼女。もういいぞ、それ以上すると、付け上がる!」
 少し冷め気味の声で慎太郎が翼女を止める。

「え、でも…」
 テンパる寸前の翼女。


 慎太郎が佐藤をにらむ。

 慌てる佐藤。


「大丈夫だよ。ちょっと翼女ちゃんとの掛け合いを楽しんでた」
 佐藤は、翼女に悪戯っ子ぽく笑いながら言う。

「そ、そうなんですか!よかった」
 ほっとした顔の翼女。

 それを見てほほ笑む慎太郎。その慎太郎をみて、佐藤もホッとする。

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