夜会で踊りましょ!!
第16章 浴衣を着るまで…
「……それで、佐藤さん…」
翼女の声が急に聞こえてきた。
「えっ!あ、はい。なんでしょう?」
いきなりで、敬語になる仁識。
「お礼を持っていきたいんですけど、何が喜ばれると思いますか?父だと、コーヒーしか出て来なさそうで、佐藤さんなら美味しい物知ってるでしょ?」
翼女がニコッと笑う。
「そうだねぇ…」
(きゃー。翼女ちゃんが笑ってくれた♡可愛いマジ天使!頼られた!頼ってもらえる。考えでねば!)
「ケーキとは皿やフォークとかいるから、マカロンとかクッキーとか軽くつまめる物がいいと思う」
上機嫌で話す仁識。
「なるほど!」
「僕の知ってるお店でよかったら、今から連れていくけど、行く?」
車の鍵をチラッと見せる仁識。
「いいんですか?」
翼女がその話に乗る。
「もちろん!でも、お父さんの許可が出たら…だけどぉ」
チラッと慎太郎を見る仁識。
「お父さんいいでしょ。一人で買いに行くのは心細いし、遥香ちゃん家にあげるのに、一緒に行ってもらうのも変だし…ね。佐藤さんならいいでしょ?」
翼女が慎太郎にお願いする。
「……」
慎太郎が俺をジッと見つめる。
「…佐藤なら、いいだろう」
許可が下りた。
「お父さんありがとう。着かえてきます」
嬉しそうに、翼女が奥に走って行く。
「仁識、変な所に寄り道するなよ」
信用してなさそうな顔をする慎太郎。
「慎太郎!少しは信用してくれよ!」
仁識は力いっぱい抗議する。