夜会で踊りましょ!!
第3章 柾季の思い
初めて翼女ちゃんと会ったのは、忘れもしない小学五年になったばかりの春。
やっと、身長が遥香より大きくなったから、態度も大きくなった頃だった。
「柾季!遥香ちゃんを学校まで迎えにいくけど、いく?」
母が車の鍵を持って近づいてきた。
「うー……」
柾季は少し考える。
(迎えに行かないと、後で、何言われるか…)
遥香の不敵な笑顔を思い出して、背中に寒気を感じる柾季。
「行かないの?」
再度確認するが、返事を聞かぬまま部屋から出て行く柾季の母。
「…行きます…」
柾季は母の後ろについて部屋を出た。
車で40分の距離に住む、母さんの兄さんの家。
伯父さん家は花屋をしている。
お店が忙しい時は、僕の家に泊まっている。
今日は、伯父さん達が大きなイベントの花を納品してて忙しいから、母さんが遥香を迎えに行っている。
「柾季?学校まで、一緒に行く?公園で待つ?」
ハンドルを握る母が聞く。
「…公園がいいな…」
僕は遥香の家の近くの噴水のある公園が大好きだ。たくさんの低木が生き生きしている。
柾季は小学生の頃から植物(主に木)に興味がある。知識も多い。
「そういうと思った」
母はクスッと笑って、公園の方に進路を向けてくれた。