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夜会で踊りましょ!!

第3章 柾季の思い

 しばらく、風になびく藤棚をみていた。


「かわいい…子だったなぁ…」
 柾季の口からこぼれた言葉。

 柾季は口をパッと押さえた。

(声でた?)
 周りを確認する。ふーっと息を吐く。

「こんな所…誰かに見られたら、大変だ…」
 胸をポンポンっと叩いて、歩き出した。


 僕は『男』だ。人前で遥香みたいに、ムヤミヤタラニ『かわいい』と言うものじゃない…って爺ちゃんが鬼の顔で言う。

 僕もそう思う。父さんだって、玄さんだって、みんな男で、かっこいい!僕も、かっこいい男になりたい。

 でも、花が咲いたら、『かわいい』よなぁ…新芽だって小さくて『かわいい』と思う。

 玄さんに聞いたことがある。
「男らしく『かわいい』ってどう言う?」

 玄さんは、しばらく考えて、こう言った。
「そうですねぇ…『可憐(かれん)な花』とか言えば、男らしいでしょうかねぇ?」

 他のみんなも、結構考えていたなぁ


 男の言葉ってたいへんだよなぁ



「きゃ!」
 遊歩道を歩いていると、女の子の声が聞えた。

「ん?」
 その声の方をみると、枝がガサガサ動いていた。


 柾季はその動いている枝の木の側に歩いていく。

 近づいていくと、ザクロの木の枝に髪の毛が絡まって困っているさっき、藤棚にいた女の子だった。

「いや、どうしよう…」
 無理に引っ張ると、余計に絡まってしまう。

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