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夜会で踊りましょ!!

第4章 小学生の翼女(わたし)

(“マサキ”って誰?誰か聞いて!)
 心だけ、あの輪の中に入っている翼女。

「ねー、マサキって誰?」
 誰かが聞いた。

(よし!)
 心の中でガッツポーズの翼女。

「従姉弟よ。同い年なの。でも、私のほうが先に生まれたからお姉ちゃんよ」
 遥香はにこっとして言う。

「お姉ちゃんってまた言ってる…」
 呆れ顔の歩睦。

「なによ、歩睦だって『お兄ちゃん。と呼べ』って言ってたじゃない?」
 ちょっと膨れ気味の遥香。

「あれわぁ!その場の雰囲気で、成り行きで…」
 バツの悪そうな歩睦が、他の子に説明しようとしている。

 こういう二人を見ていて、みんなは、笑顔になる。

 不思議な人たち。なんでもない会話で、人を笑顔に出来る。うらやましい。

(でも、私は………帰ろう…)
 翼女は、そのまま誰にも挨拶しないで教室を出て行く。



「翼女ちゃん。また月曜!」
 出て行く翼女を見た遥香が、立ち上がって言う。

「え?」
 翼女が振向くと、手を振る遥香と笑顔の歩睦。


「あ…はい」
 キラキラして、直視できない。


「顔が真っ赤!」
 誰かの声が聞えた。

「は、恥ずかしい」
 翼女は我に返るって、逃げるように走っていく。


「あーぁ、翼女ちゃんに逃げられちゃった!」
 遥香はちょっと残念そうに言う。

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