夜会で踊りましょ!!
第6章 柾季、色々考えます
柾季は小5年のあの日を追い出している。
「柾季!遅い!」
車の中から遥香の膨れ顔が見える。
「ごめんごめん。中で、困ってる女の子がいてね」
頭をペコペコ下げながら、母の車に乗る。
「女の子が困ってた?」
ハンドルを持つ母が柾季に聞く。
「うん。さっきね、ザクロに髪が引っかかったから…」
「ザクロ。怪我してなかった?」
母はザクロにトゲがあることを知っている。
「うん。大丈夫だったと思う」
「思う?確認してないの?」
後部座席から遥香が話しに入ってきた。
「だって、逃げるんだもん。ちょっと、触ってだけで、震えるし、電話かかってきたし…」
語尾がダンダン小さくなる柾季。
「触って、震える女の子…」
遥香は、下唇を触りながら、少し考える。
「その子ってふわっとした黄色い服を着てて、髪型肩位のかわいい子?」
遥香がくわしく指定して聞く。
「えーと、そんな感じ…」
女の子の姿を思い出す。
「あーじゃ、転校生の翼女ちゃんだ!」
遥香が少し困った顔をしながら言う。
「ツバメちゃんって言うんだ」
後部座席に身体を向けて、遥香のほうを向く。
「柾季…翼女ちゃん怯えてなかった?怖がってなかった?」
「動くなって言ったら、ジッとしてたよ。髪の毛が絡まって、動くと、取れなかったから…」
「えー、やっと、クラスに馴染んだかなって、歩睦と話してたばっかりだったのに…」
シートに深く座って、はーとため息を吐く遥香。