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夜会で踊りましょ!!

第10章 『橘姫の絵画展』

「ええー、いいじゃない!もう!」
 小鳩が残念そうな声を出す。


「三浦さーん!」
 他のスタッフが小鳩を呼ぶ。

「ほら!先輩呼んでます!」
 遥香が小鳩を押す。

「うー、また後でね」
 小鳩は名残惜しそうな顔をしながら、スタッフルームに入っていく。



「遥香。さっきの人は誰?」
 柾季が遥香に質問する。

「はぁはぁ!さっきの人は、三浦 小鳩(みうら こばと)さん。美大生!展覧会の主催サークル在籍よ」
 肩で息をしている遥香。

「へー」
(印象に残る人だったなぁ…)
 柾季が小さくつぶやく。

(それに、遥香がこんなに息を上げるの、珍しい)
 遥香の顔を見ている柾季の口角が上がる。

「もう。普段はいい先輩なのに!」
 大きくため息を吐く遥香。


 スタッフルームの方が騒がしい。


「じゃ、ここからは、別行動ね!」
 遥香があせった顔をする。

「「一緒に来い」って言って、別行動?」
 チケットをヒラヒラさせる柾季。

「柾季…」
 歩睦が柾季の服を引っ張る。

「?…」
 柾季が歩睦の方を向くと、歩睦が頭を小さく振る。

「私は、一人でゆっくり見たいの!」
 遥香が周りを見回している。

「………っ……」
 スタッフルームからさっきの女性の声がする。

 遥香がピクッと体を震わせる。

「…ぁ…わかった…ごゆっくりどうぞ!」
 柾季は言いたい事を飲み込むように、軽く頭を下げる。

「じゃ、14時30分にまた集まりましょ!」
 遥香は満面の笑顔で入っていった。

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