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夜会で踊りましょ!!

第11章 橘様とは

「橘様とは天平の世に存命だった皇女様です。
あ!天平の世とは、西暦で言うと 729年から 749年までの年号です。

簡単に言うと奈良時代ですね。

名前は『橘聿智乃(たちばなのいちの)』といいます」

「柾季君も名前くらいは知っていますよね?」
 翼女が資料を捲りながら、柾季をジッと見つめる。

「あ!うん。もちろんだよ」
 柾季は話の内容より翼女を見ていて、慌てる。

「よかった…」
 翼女はニコッと笑った。

「時の帝 聖武天皇と妃の橘古那可智(たちばなのこなかち)との間に産まれた姫ですが、あまり表には出ず、いつも屋敷の中ですごしていました」

「オモテって、外に全然でなかったのかな?ヒッキーだな…」

「ヒッキー?なんですか?それ?」
 翼女が不思議そうな顔をする。

「…ぅー…翼女ちゃん…話進めて…」
 柾季はごまかすようにカフェモカを口にする。

「?はい…え~と」
 資料に目を戻し読み始める翼女。

「幼い頃に死病だった天然痘にかかり、目の力と耳の力を失っていたので、屋敷の縁側に座って過ごしていました。

当時の皇女たちは、良い縁談のため和歌や楽器の手習いをしていました」

「聿智乃姫はどれも無理だね…」
 柾季は小さくつぶやく。

「そうですね。しかし、どこの姫にも負けない物を持っていたようです」
 翼女は一枚の紙を出した。

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