
薔薇はあいを囁く
第3章 薔薇の正体
「必死だね?だけど、君はもう用なしだ。明日からこの邸に来なくていい。出ていけ。」
「…ひっ!立人さまっ。」
「大丈夫、君には、もっと酷いご主人様が見つかるはずさ。」
「おお、恐れながら、私は、立人さまほど酷いご主人様に出会ったことは、ありません。」
五美の言葉に酷く満足してしまう。
確かに、僕以上に最低な男がいたら、一度会ってみたい。
それほど僕の心の中は、穢れてしまっている。
「クス(笑)光栄だね。」
悪魔のような微笑みを浮かべて、耳元で囁くと、五美は、へなへなと床に座り込んでしまった。
その顔は、真っ赤だった。
「…かっこいいです。」
は?僕がかっこいい?
バカじゃないのか?
「…私は、いつまでも、お慕いしていますから。邸に居させて下さい。お願いします!」
「あっそ。勝手にするがいいよ。ただし、あいを傷つけたりしたら、赦さない。」
「わかりました。愛さまを傷つけるのは、立人さまただお一人だと言う事なんですね?」
ドクンと、心が波打つ。
そうだ、あいを傷つけるのは、僕だけでいい。
この先もずっと。
「分かればいい。」
「とても羨ましいですけど、引き下がります。私もあの小娘が泣き叫ぶ瞬間が見てみたいですから。」
「君には見せない。」
「御意。」
それで満足したのか、五美は、僕に一礼して、下がって行った。
ふん、どこまでも、マゾヒストでサディスックな女だった。
