赤い恋 ~sho sakurai~
第32章 さよなら
結「……どこ行こっかなぁ…」
ガラガラと大きなキャリーケースを引きながら私は駅のホームで立ち往生。
実家は遠くて新幹線になんて乗るほどのお金はあいにく、持ち合わせていなかった。
結「…仕事も探さなきゃ…」
友達のところは無理だし…、
すぐみんなにばれちゃいそうだし、何よりすっごぉく迷惑だし…。
この就職難の中、仕事が見つかるとは思えない。
もちろん、昔の仕事に戻るなんて出来るわけないし、
結「……はぁ~…」
案外大変なんだなぁ…。
自分の無力さが浮き彫りになる。
結「とりあえず…、しばらくはネカフェかな…」
まさか大人になってネカフェに泊まることになるとは…。
結「…ほんと…、どれだけみんなに甘えてきたのかよく分かるよ…、」
情けなく呟いて、なるべく離れたくて改札に向かった。
と、
ー『ガッ!』
結「あっ!」
「ったぁい!」
私のキャリーケースが改札から出てきた1人の女の人の足に引っかかってしまった。
結「すいませ…!」
「ん?あっれぇ?結衣ちゃんじゃない!」
結「っ!」
その女の人はサングラスをしててよくわからなかったけど、
結「……沙良さん…、」
沙良さんはサングラスを外して、私のキャリーケースを見た。
沙「……ふぅん…、(笑)」
状況をくみ取ったみたいで私の顔をみて沙良さんはまたサングラスをかけた。
結「……もう…、関わらないですから…。みんなとは……さよならしました」
私は沙良さんを見てその場を立ち去ろうとして、歩き出した。
沙「待ちなさいよ」
沙良さんが私を制止した。
結「…何ですか」
沙「……ちょっと、話さない?」
沙良さんはニヤリと笑って顎でそばにあったカフェを指した。
結「…………、」