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王家の詩には綴られない恋

第1章 王家の詩には綴られない恋

「リア。愛している」
マクシミリアンの顔が、近づいてくる。このままでは同姓とキスする羽目に…。

「ちょ……」
退こうと足を後ろに送るが、ガツン、と堅いものに当たる。そこは壁際だった。

「リア」
少しひんやりとしたマクシミリアンの手が、私の顎に触れた。

ひいいいいっ!!


…と、そこへ。

「何やってんだ、おまえ」
知った声が飛んできて、涙がにじんだ。声の方を見ると、やはりデュランが立っていた。デュランも私と同じく機密局員の一人で、共に行動してきた仲間だ。

救世主…!!

「た、助けて…」

「は?」
わけのわからないデュランは、ぽかんと口を開けて呆けている。

「リア、愛している。ここにサインを」
ペラリと出した紙には、用意周到にも彼の名が既に書かれていた。その横を指差すマクシミリアンの目は本気だった。心理作戦とかそういう類かと思ったが、どうも違うようだ。

「いやいや」

「私は嫌か」

「いや、嫌っていうか…」
どうすればいいんだこの人は。困り果てていると、しばらく二人のやり取りを唖然と見ていたデュランが、あー、と言った。

「…なるほどな」
デュランはため息をもらす。どうやら、状況をわかってもらえたようだ。

「それなら俺も言うが」

「――リア。俺はずっと、おまえのことが…」

「だから、私はデオンだ!」

「あ、そうなのか?」

「別に私はかまわない。弟の身体であっても。だから私と」

「誰かーっ!!この人酔っぱらってますーーー!!」
ありったけの大声で叫ぶが、周りに人の気配はない。

言い忘れていたが、ここはフランス王宮近くの裏路地。人通りは少なく、デュランが来てくれただけでも奇跡というくらいだった。

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