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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第14章 第三話 【観玉寺の廃妃】  祭りの夜

 この祭りは供養の意味合いが強い。賑々しく行われるわけでもないが、噂は噂を呼び、都からわざわざお参りにくる両班や商人もいると聞いている。
 もちろん、ふもとの村人たちもこぞって山を登って参詣にやってくる。村人たちの多くは文字の読み書きができないため、僧たちが代わって灯籠に願い事を書いてやる。人出が多い時間帯では猫の手も借りたいと思うほどの忙しさで、明姫もまた手伝いに出る。村人にいちいち訊ねては、願い事を灯籠に代筆した。
 今はその忙しさもひと段落した感がある。明姫は漸く自分の願い事を書くゆとりができた。やはり願うのは毎年、同じことだ。都にいるユンの健康と安寧を記し、灯籠を浮かべた。

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