テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第14章 第三話 【観玉寺の廃妃】  祭りの夜

 と、明姫の袖を引く者がいた。
「淑媛さま。わっちの倅に今年こそは良い嫁が見つかるようにと書いて下さいませんかのぅ」
 去年も明姫が代筆してあげた老婆である。小柄な老婆は腰が曲がり、ますます小さくなってしまったように見える。老婆の後ろには、その当の息子が所在なげに立っている。
 母親に似たのか、けして男としては背は高くないが、働き者で木訥そうな感じがかえって好ましい。
「わっちが四十になってできた末息子でしてなぁ。もうかれこれ三十になるというのに、嫁が一向に来ませんのじゃ。わっちは息子が気がかりで死のうにも死ねませんがな」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ