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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第14章 第三話 【観玉寺の廃妃】  祭りの夜

 ふいに、何日か前に慈鎮から聞いた言葉が明姫の脳裏に甦った。
―どうか機会があれば、私たち民の声を国王さまにお伝えして戴きたいのです。
 真摯な表情で訴えていた慈鎮の気迫が今もありありと思い出される。
「殿下、お願いがございます」
 思わず〝殿下〟と呼びかけずにはいられなかった。
「何だ、珍しいな。これまで一度も私にねだったことなどのないそなたなのに」
 からかうように言われ、明姫は咄嗟に言葉を詰まらせた。

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