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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第14章 第三話 【観玉寺の廃妃】  祭りの夜

 房の前には王が立っている。
「もうお帰りになるのですか?」
 維俊の問いに、王は皮肉げに口許を歪めた。おかしい、何かが違う。維俊は首を傾げる。英明で心優しい王がこんな笑い方をすることはないのだが。
「―何度も言わせるな。帰る」
 心なしか端正な面も蒼褪めているように見える。
「どこかお身体の具合でも悪いのですか?」
 大切な御身に何かあっては一大事と訊ねたのだが、王は憮然として首を振っただけだ。
 維俊は大いなる不審を抱きながらも、この場はもう追及は控えて若い王の後に付き従った。

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