テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第14章 第三話 【観玉寺の廃妃】  祭りの夜

 その四半刻後。ユンは狂ったように愛馬を走らせながら、都へと帰っていた。
―どうしてなんだ、何で私を怒らせる? 
 泣かせないと誓ったその夜、またしても明姫を泣かせてしまった。恐怖で顔を引きつらせる彼女を手酷く抱いてしまった。あれは単に快楽を追求するための営みではなく、明らかに苛立ちや憎悪をぶつけるのが目的だった。
 自分をああまで駆り立てたものがそも何なのか、ユンは嫌というほど知っている。それは嫉妬という名の醜い感情だ。
 あの時、明姫が慈鎮の名をあっさりと言えば、ユンはあんな酷い抱き方をしなかった。だが、彼女は最後まで頑固にも慈鎮の名を出さず、あの若い僧侶を庇い通したのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ