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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

「今更だけど、あなたの名前は?」
 さりげなく訊ねると、すぐに〝イ・ユン〟と返ってきた。ペク氏ではなく、李氏を名乗るということは、彼は少なくとも領議政の弟たちの息子ではないと判る。ならば、既に他家に嫁した妹たちの誰かが生んだ息子なのだ。
「そういえば、そなたの名前もまだ訊いていなかったな。名前も知らないのに、何か色々なことを喋ってしまった。名前、何ていうの?」
「明姫」
「姓は?」
 思わず蘇氏と言いかけて、慌てて言い換える。
「金(キム)氏よ」

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