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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

「金明姫。良い名前だ。先刻、そなたに簪とノリゲを贈った時、玉の色が夜明け前の空のようだと言ったね。明姫という名は、まさに夜明けの空の色を象徴しているように思える。夜明けの空に差す真っすぐなひとすじの光が眼の前に浮かぶようだ」
「ありがとう。亡くなった父から聞いた話では、光のように眩しく輝いて生きて欲しいと願いを込めて、この名を付けたそうよ」
―良いか、たとえ周囲がどれほど暗くても、闇を照らすひとすじの光となり、遍く世を照らす、そんな生き方をしてくれ。光のように眩しく輝きながら生きてゆくのだぞ。
 幼い明姫を膝の上に乗せ、父がよく語っていた。今では容貌すら朧になってしまった父。大好きだった父。国王殿下のためなら、生命を賭けて任務に挑むと言い、言葉どおりに散っていった―。

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