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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第15章 第三話 【観玉寺の廃妃】  再生

 ユンはコツコツと人差し指で執務机を叩いた。
「殿下」
 側に控える黄内官―むろん、内侍府長の方である―の気遣わしげな声にも気づかない。
「殿下」
 先刻より大きな声で呼ばれ、ユンは初めて面を上げた。むろん、頭の中は愛しい妃のことで一杯のあまり、忠実な内官の声もまるで彼には届いていなかったのである。
「爺や、どうかしたか?」
「ひとまず終わりに致しますか?」
 執務机にはまだ上奏文が山積みになっている。
「何故? まだ始めたばかりではないか」

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