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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第15章 第三話 【観玉寺の廃妃】  再生

「さっきは何をしようとしていたのだ?」  改めて問われ、明姫は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ご覧になっていたら、お判りでしょう」
「おい、何だか言葉遣いが全然違うぞ」
 明姫は艶やかに微笑んだ。
「少しだけ、ほんの少し昔に戻ってみたかったのです」
 私が女官で、あなたが集賢殿の学者、ただの若者ユンであったあの頃に。
 明姫は続きは言葉に出さず、飲み込んだ。
 しかし、彼なら明姫の言葉に出さない想いをちゃんと判ってくれたはず。明姫とユンのまなざしが暗闇の中、交わり合う。夜空の色と同じ彼の深い瞳の中に、明姫は自分の想いが確かに彼に伝わったことを悟った。

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