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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

―宮中にいれば、かえって、そなたの身は安全というもの。
 伯母の読みは正しかった。流石に国王の住まう宮殿では左議政も大それたことはできないと悟ったのだろう。更に、明姫が賊の姿を直接見ていないことも向こうを安心させたのか、以来、明姫が生命を狙われることはなかった。
 こうして月日は流れた。明姫は崔尚宮の許で女官としての基礎をみっちりと仕込まれ、正式な女官となったのである。
 左議政はこの九年間で領議政(ヨンイジョン)になり、まさに我が世の春を謳歌していた。が、天は彼の所業を見ているのか、事は思い通りにはなかなか運ばなかった。掌中の玉と愛でる一人娘を年若い国王の妃としたものの、結婚後七年を経ても、王妃に懐妊の兆はなかった。

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