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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第18章 第四話 【永遠の少女】 謀(はかりごと)  

 が、用意するものは、どうしてもそのせいか、女児向きのものばかりになってしまうのは致し方ない。もう足袋はすっかり出来上がっていて、今はくるぶしの辺りに、小さな刺繍を入れているところだ。刺しているのはウンとの忘れられない想い出―あの夏のひとときを彩った撫子の花であった。
 右側は完成しているから、後は左側さえ済ませれば出来上がる。小さな愛らしい足袋に咲く薄紅色の花を見つめ、明姫は微笑んだ。愛おしげに花を指でなぞったその時、扉の向こうから声が響いた。
「和嬪さま、洪尚宮にございます」
「入って」
 顔は動かさず声だけで返事すると、ほどなくヒャンダンが入ってくる。

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