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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと

 夜というのが嘘のように、ここは明るい。
「これが全部妓楼なの?」
「そうだ。ここは女と男が一夜の夢を売り買いする場所だからな」
「一夜の夢を?」
「ここでは夜毎、幾つもの恋が花開く。でも、すべてが紛い物だ。金をやりとりして、女は男に夢を見させてやる。男も最初から女の言葉に真はないと承知で夢を買う。そういう色恋もこの世にはあるということだ」
「ここで働く妓生たちは、皆、何を考えて生きているのかしら」
 ユンが物問いたげに見つめてくる。明姫は沈んだ声音で言う。
「夢を売るって、それは結局、身体を売ることでしょう。もちろん、皆、ここに来たくて来たわけじゃないだろうし、妓生になりたかったわけでもないと思うけど」

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