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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第23章 第二部【身代わりの王妃】 抜け殻

 仁嬪は珍しく声を立てて笑った。
「殿下は女心をくすぐるのがお上手ですね。一体、どれだけの女に同じ科白を囁いておられることやら」
 仁嬪のけして大きくはない一重の眼がユンをじいっと見つめている。何か口先だけの浮いた科白だと見透かされているような気がして、彼は慌てて妃から眼を逸らした。
 自分はいつから心にもない科白を平然と幾人もの女たちに囁きかけるようになったのか。
 明姫を失ってからというもの、彼の魂(こころ)はいつもどこかをさまよっている。仁嬪も含めて複数の側室たちを愛しいとは思うが、かつて明姫に対して抱いたような烈しい恋情や狂おしいほどの渇望はない。

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