テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第3章 第一話【桜草】 逢いたくて~恋ごころ~

 だが、領議政のように時の権力者というのならともかく、一介の下っ端女官を殺害したところで得をする者がいるとは思えない。国王の妃というのならまだ判るが―。
 それとも、生命が狙いではなく、別のものが目的だとか? しかしながら、後宮の女官を陵辱したりしようものなら、その者は断罪に処せられるのが通例である。女官は国王の所有物だから、国王の女に手を付けたと見なされるのだ。
 明姫が予想外に抵抗したため、不埒者も慌てたようだ。後ろから羽交い締めにされた手に更に力がこもった。
「おい、落ち着け。頼むから、暴れるな」
 賊の声が耳許で囁く。なおも全力で抵抗する明姫の耳に潜めた声が飛び込んできた。
「明姫、私だ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ