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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第23章 第二部【身代わりの王妃】 抜け殻

 あらゆるものの入り混じった雑多な匂いが人いきれの中に立ちこめている。しかし、それは彼に不快さよりも懐かしさを感じさせていた。
 ユンはこの生活感溢れる匂いと、それらを醸し出す空間を昔から愛していた。今、彼の眼前には久しく眼にしなかった漢陽の町並みがひろがっている。
 声高に客を呼び込む鶏肉屋の主、その隣でこれも負けじと声を張り上げる小間物屋の若い男。いかにも若い女が好みそうな華やかな色合いのノリゲを手にして、うっとりと見つめている十八、九の娘。
 その横を十歳くらいの女の子の手を引いた中年の女房が忙しげに通り過ぎていく。

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