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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第23章 第二部【身代わりの王妃】 抜け殻

 もう、本当に明姫はいないのだな。かつて明姫とともに歩いた都大路をこうして一人で歩いてみると、今更ながらに想い人不在の長い年月と孤独を思い知らされるようだった。
 その時。ユンは澄んだ声音にいざなわれるように振り向いた。
 往来の両側に様々な店が出ているが、少し後方の左側に筆屋があった。商っているのは筆だけではなく、紙や硯、墨といったものも幅広く置いているようである。
「これは何の毛でできているのですか?」
 その見憶えのある華奢な後ろ姿に、ユンは思わず笑みを零しそうになった。

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