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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第23章 第二部【身代わりの王妃】 抜け殻

「馬ですよ、お嬢さま」
 店主は五十年配の如才なさそうな、いかにも商売人風の男である。
「馬ねぇ」
 思案に暮れる娘に、店主はここぞどばかりに熱心に説明する。
「馬は馬でもそんじょそこらの馬じゃない。清国の大草原を走り回っている駿馬の毛でこしらえた筆ですぜ。そんな逸品はこの漢陽といえども、滅多に手に入りませんからね」
「清国の大草原を走り回っていた?」
 その大袈裟な物言いがおかしかったのか、少女はクスクスと声を上げて笑った。

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