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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第25章 第二部 【身代わりの王妃】  想いのゆくえ

 立ち上がってユンを出迎えようとする春花を彼は手で止めた。
「挨拶など良いから、そのまま続けてくれ」
「はい」
 春花は頷き、また座り直して伽耶琴を弾き始めた。遠くで聞くより、なおいっそう心の奥底に滲み込むような、魂を震わせるような音色である。
「そなたにこのような妙技があるとは知らなかった」
 ひとしきり弾いた後、春花は手を止め、上座に座った彼と向き合った。
「殿下がお聞きになっているかと思うと、緊張で手が震えました」
 春花は少女らしい邪気のない笑顔で言った。

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