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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第25章 第二部 【身代わりの王妃】  想いのゆくえ

 傍らに彼も填めている翡翠の指輪が転がっているのには少し怒りを憶えたけれど―、小さな手には彼が買い与えたノリゲがしっかりと握りしめられていた。白い頬は少し汚れているせいか、幾筋もの涙の跡がはっきりと見て取れる。
 少女の側には袋に入った揚げパンがあった。一つは半分ほど食べ、もう一つはまだ食べていない。町の露店で買ったのだろう。
 愚かな娘だと嗤うこともできた。宮殿にいれば、栄耀栄華は思いのままだ。この国の王妃という誰もが羨む地位に就き、しかも、政略結婚でありながら、見事に王の心を射止めたのだから。成均館の直講の娘が王妃になるなど、これから先もまずあり得ない。それなのに、王の寵愛を受けることを拒み、逃げ出した。

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