身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第4章 第一話【桜草】 蜜月と裏切り
蜜月と裏切り
幸いなことに、その夜、明姫は誰に見咎められることもなく自室に戻った。部屋に帰り着いたときは、既に夜明けが近くなっていた。思いの外、ユンと長い時間を過ごしたのだと今更ながらに気づいた。
夜明け前のひととき、まだ夜の名残をとどめた菫色の空を眺めながら、切なく思い浮かべるのはユンの面影ばかりだ。人眼についてはまずいため、まずは手早く蒼い官服を脱ぎ、女官のお仕着せに着替えた。
袖に忍ばせていたノリゲを取り出し、手のひらに乗せて、ひとしきり見つめた。ひとめ見た瞬間、夜明けの空の色のようだと思った玉は灰簾石(タンザナイト)というそうだ。その石が桜草に似た小さな花の花片ひとひら、ひとひらに填っている。
幸いなことに、その夜、明姫は誰に見咎められることもなく自室に戻った。部屋に帰り着いたときは、既に夜明けが近くなっていた。思いの外、ユンと長い時間を過ごしたのだと今更ながらに気づいた。
夜明け前のひととき、まだ夜の名残をとどめた菫色の空を眺めながら、切なく思い浮かべるのはユンの面影ばかりだ。人眼についてはまずいため、まずは手早く蒼い官服を脱ぎ、女官のお仕着せに着替えた。
袖に忍ばせていたノリゲを取り出し、手のひらに乗せて、ひとしきり見つめた。ひとめ見た瞬間、夜明けの空の色のようだと思った玉は灰簾石(タンザナイト)というそうだ。その石が桜草に似た小さな花の花片ひとひら、ひとひらに填っている。