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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第4章 第一話【桜草】 蜜月と裏切り

 しかし、そんなものは熱狂する若者たちには一切通用しない。幾ら禁止しようと、彼等はどこからか探し出してきて、いつしか巷ではその類の淫猥(エロ)本がしきりに出回っている。中には、ひそかに原本を手に入れた者がそれを書き写して法外な高値で町の古本屋に売って大儲けをするという話まで出てきた。
 そうして、不埒な小説の写本・複製が闇市で売買され、また新たな販路を通じて若者たちにひろまってゆくという悪循環が続く。ついには一般庶民だけではなく、人々の範となるべき両班までもがこっそりと淫猥本を高値で闇屋から買い上げる―という実にけしからぬ事態にまで発展したとか。
「馬鹿を申すな。私はそのような俗なものは読まぬ」
 ユンは眉根を寄せたが、明姫は笑った。

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