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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第4章 第一話【桜草】 蜜月と裏切り

 あの日、クヒャンが一人になって呟いた科白の続きは
―それから、あの鳳凰は黎明の空を飛んでいた。私が見たのは、翼をひろげて明けの空を軽やかに舞う姿だったねぇ。
 明姫の祖母がユンの上に見たのは、夜明け前の橙と群青が入り混じった大空を美しい鳳凰が悠々と旋回する姿だったのだ。
―これから明けようとする空を飛ぶ鳳凰は聖君ソングン(名君、傑出した偉大なる国王)が世に出現する前触れ、即ち瑞兆だもの。やはり、あのお方は―。
 飲み込んだ言葉の続きは、ついに再び紡がれることはなく、占い師の血を色濃く引く祖母は孫娘のゆく末に限りない栄光と悲哀を見たのだ。

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