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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第4章 第一話【桜草】 蜜月と裏切り

「そう、なのですか」
 ユンがそこまでして―大妃と対立してまで庇ってくれたのは嬉しい。だが、それで現実が変わるわけではないのだ。
 明姫がうつむいていると、崔尚宮が側に寄り、そっと抱き寄せられた。
「可哀想な小姫」
 身体をすっぽりと包み込む温もりに、また涙が溢れる。
「泣きたければ、好きなだけ泣きなさい」 
 こういうときは、いつもは厳しい上司が本当は血の繋がった伯母なのだと実感できる。六歳で死に別れた実の母はもう顔さえ思い出せないほど、記憶は朧になった。崔尚宮こそが、明姫にとっては母であった。

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