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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第5章 第一話【桜草】 別離という選択

 何故なのだ? 自分のどこがいけなかったのだろう。自分はただ良人を愛していただけなのに。良人に振り向いて欲しくて、他の側室たちのように優しく微笑みかけられたかったのだ。
 良人が孔淑媛ばかりを寝所に召しているのが堪らなかった。良人の夜の訪れを待ちながら、幾夜も独り寝の寝床で涙を流したことか。
 今し方、彼女の許を去っていった息子の瞳は、あのときの良人のまなざしとそっくりだ。凍てついた氷のように彼女の心を刺し貫いた。
 皆、私の許から去ってゆく。良人も息子も、誰もが私を一人残して、他の女の許に行くのだ。一度も私に逆らったことのない子が、親孝行で優しい殿下が生まれてめて私に背いた!

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