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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第5章 第一話【桜草】 別離という選択

―殿下、お願いです。行かないで。
 中殿としての誇りも何もかもかなぐり棄て、去ろうとする国王の脚にしがみついたのに、王は彼女を振り払うようにして足音も荒く去っていった。あの後、孔淑媛の許に駆けつけたのは判っている。
 足蹴にされたも同然の彼女は茫然自失の体で良人を見送るしかなかった。傍では幼かった世子―ユンが声を上げて泣きじゃくっていた。だが、息子は実の母が父から足蹴にされて泣いたわけではない。姉のように慕っていた孔淑媛が亡くなったことを哀しんでいたのだ。 

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