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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第5章 第一話【桜草】 別離という選択

「まあ、人の話は最後まで黙って聞け」
「―申し訳ありません」
 明姫はうなだれた。
 そんな明姫を見つめる女官長の眼にはどこか憐憫の情が浮かんでいるが、明姫には判らない。
「こたびのことで、大妃さまは烈火のごとくお怒りだ。あのとおり、ご気性の烈しいお方ゆえ、正直、そなたの身に危険が及ばぬとも限らぬ」
 ここで女官長の声が一段と潜められた。
「そなたが入宮するはるか昔の出来事ではあるが、そなたも孔淑媛の話は知っておろう。私はもう二度と、後宮であのような悲劇は繰り返したくない。

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