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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「とにかく、この件は他言せぬよう。大妃さまは今、何かとお心穏やかならぬ毎日なのだ。そんな時、大切な書物を破ったなどと知れれば、どれほどお怒りになるか、考えただけでも怖ろしい」
 一人前の女官とはいえ、まだまだ若く下っ端にすぎない明姫は、大妃の前に出ることはない。崔尚宮も一応、大妃付きとはいっても、直属の上司朴(パク)尚宮が大妃に側近くに仕える身であり、彼女自身はその上司の背後に控える立場にすぎないのだ。
 ここのところ、大妃は苛立っていることが多い。というのも、一人息子である国王が新しい側室に寄りつきもしないせいである。その側室というのはもちろん、大妃の兄領議政から強く推してくれと懇願された養女であった。

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