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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第5章 第一話【桜草】 別離という選択

「お祖母さま、ありがとうございます」
 ユンは立ち上がり、丁重に頭を下げた。ユンが室を出ていこうとしたその刹那、クヒャンは声をかけた。
「一年前、あなたを初めて見た時、あなたの上に私は鳳凰を見たわ。あなたは一体―」
 言いかけて、クヒャンは次の言葉を言わなかった。
 物問いたげなユンに向かい、彼女は往年の美貌を窺わせる若やいだ面をほころばせた。
「いいえ、止めておきしまょう。鳳凰の君、私はあなたがどこのどなたでも構いません。ただ明姫の祖母として、あの娘を大切に慈しんでやって頂きたいのです」

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