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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第6章 第二話 【桔梗の涙】 予知夢

 宝石箱の中からその日の衣装に合う簪を選び、髷(まげ)に挿して支度は終わる。明姫の今の身分は淑媛といって、側室の中では一番下ではあるが、国王の寵愛を一身に受ける今を時めく妃の宝石箱の中には豪奢な簪(かんざし)や指輪、ノリゲなどが溢れている。
 いずれも当代一の細工師が丹精した逸品ばかりで、国王から贈られたものだ。簪にもノリゲにも惜しみなく高級な玉(ぎよく)が使われている。
 だが、この王の熱愛する妃は至って無欲だった。王はこの若く美しい妃を殊更派手やかな衣装や装飾品で飾り立てたがったけれど、明姫自身はあまり華美な装いを好まない。そのため、折角贈られた衣装や装飾品も実のところ、あまり出番がない。

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