テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第6章 第二話 【桔梗の涙】 予知夢

「それは、そなたの見間違いであろう。私は確かに先刻、淑媛さまのお部屋から出ていったが、別段何も持ってはいなかったぞ」
 思わず狼狽しそうになるのを堪え、ヒャンダンは平静な口調で応えた。
「それにしても、そなたこそ何用でこそこそと私の周辺を嗅ぎ回っているのだ?」
 少し強い詰問口調で訊ねると、女官は大袈裟に手を振った。いつもの淡々とした挙措からは、不自然なほど大仰すぎる仕種に余計に疑念が募る。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ