テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第7章 第二話 【桔梗の涙】 異変 

「黄(ファン)内官、悪いが一人にしてくれ」
 黄内官はハッと息を呑み、それから恭しく頭を下げた。
「承知致しました」
 一礼してから静かに出てゆく内官を見つめ、ユンはがっくりと執務机にうち伏した。
 自分は何ということをしでかしたのか。中殿も王妃である前に、ただの女なのだ。自分が新たに明姫という心を捧げる女とめぐり逢った今、王妃が心中穏やかであるはずがない。
 幾ら夫婦仲が冷え切っているといっても―いや、冷え切っているからこそ、余計に今は中殿に優しく接してやるべきだった。苛立った妻が多少の嫌みを口にしたとて、すぐに応戦して妻を傷つけるような言動は慎むべきであったのだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ