テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

 男が握りしめた拳を突き出して見せるが、いまいち、迫力というか緊迫感に欠ける。
「助けて下さったのは嬉しいですけれど、物騒なことをおっしゃるのは止めて下さいね?」
 言ってから、眼前で憤怒に震えているらしい男をまじまじと見た。本人は殺気立っていると思い込んでいるらしいが、そんな風にはいっかな見えない。どう見ても育ちの良さが全身から漂い溢れていて、彼と物騒な言葉は全然似合わないのだ。
「せめて殴り倒すくらいにしてください」
 と、明姫もまた、負けないくらい剣呑な科白を口にしている。男はしばし唖然として見ていたが、やがて、声を上げて笑った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ