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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「そなた、意外に鋭いな」
 そっぽを向いたまま言う男に、明姫は肩を竦めて見せる。
「別に私が取り立てて鋭いわけではないと思います。だって、失礼ですが、あなたさまを見ていて、武官だとはどうしても思えないもの」
 よくあんな見え透いた嘘が通じたものだ。先刻の放蕩息子はよほど動転していたか、根っからの阿呆かのどちらに相違ない。武芸者は、ひとめ見れば判るものだ。鍛え抜かれた体躯や隙のない身のこなし、どれ一つ取っても、この男に当てはまるそれらしきところはない。
 大方、領議政の甥の友人だとか、その他諸々の立て板に水のごとく口にしていたことも嘘八百を並べ立てたにすぎないだろう。

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