テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第8章 第二話 【桔梗の涙】 陰謀  

 下っ端の女官にまでいつも親しげに声をかけ、仕事の労をねぎらうことを忘れなかった。時には国王から賜った珍しい菓子を殿舎の女官一同にふるまうこともあり、〝お優しい淑媛さまにお仕えできて、幸せ〟と女官たちは皆、女主人に心を込めて仕えていたのである。
 庭で明姫を見送る女官たちの大部分が、もしかしたら明姫が二度とこの殿舎に戻ってくることはないのでは―という不安を拭えなかった。
 もちろん、明姫にも彼女たちの嗚咽は届いていた。この殿舎を与えられ正式な側室として待遇を与えられるようになって、まだ四月(よつき)ほどにしかならない。なのに、皆がそこまで自分を思っていてくれたのかと思うと、正直意外でもあり嬉しくもあった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ