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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第9章 第二話 【桔梗の涙】 対決

 毅然として歩む淑媛の姿は、周囲の人々の眼にはどのように映じたのか。淑媛の味方ともいえる女官たちは別として、大妃殿や中宮殿の女官たちには、
―あれほどの怖ろしい悪事を働きながら、悪びれる風もないとは、何とも空恐ろしき女よ。
 と、その泰然とした態度すらも天を怖れぬ邪悪な妖婦としか映らなかった。
 その日は朝から鈍色の雲が幾重にも垂れ込め、都の上を低く覆っていた。この国の至高の存在である国王に一心に愛された幸せな少女は、一夜にして大罪人となったのだ。
 薄幸な少女を悼むかのように、空は今にも泣き出しそうに曇っている。

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