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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第9章 第二話 【桔梗の涙】 対決

 見送りの最前列にいる崔尚宮の前を通る時、明姫はかすかに頭を下げた。ヒャンダンの泣き声がひときわ高くなる。
 ヒャンダン、これまで仲良くしてくれて、ありがとう。女官として後宮を一度は去った私が今度は国王さまの側室して帰ってくることになった時、本当は随分と勇気が要ったの。
 でも、あなたがいてくれたから、私は今日まで何とか恥をかかないで殿下のお妃としてやってこられたような気がする。
 ヒャンダンの泣き声が遠くなっていく。固く閉じた明姫の眼にも熱いものが滲んだ。
 泣いてはならない、泣くものか。無実の罪を着せられて、泣きの涙にくれながら後宮を出ていくなんて、それこそ惨めすぎる。

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